39.焼きあがった陶器の取り扱い方



作品がいよいよ完成…
一刻も早く、持ち帰って使いたいですネ!

使



食卓で使用すると、器の表面から色が少しずつ染みこんで
景色が変化していきます。
それが、陶器の持ち味。使い込む程に、良くなっていきます。


けれどもし、できれば色をあまり染み込ませたくない、のなら…
使用前に、水に少し浸けておけば
料理の汁や油分が浸透しにくくなります。


特に焼きしめ・粉引の器は油染みがつきやすいので、
そうしておくか、紙をしいて使うといいです。


それから土鍋は、初めて使う前に必ず水止め処置をしておいてください。
一握りの米を入れてとろとろになるまで炊き、一晩そのままにしておきます。

耐熱性のある器を火にかける時の注意!
これは、自作のものに限ってですが、(市販のものは大抵大丈夫です)
火にあてる側に水分を含ませないでください。
水分を含ませた状態で火にかけると、大きく割れる事がよくあります。
また、いきなり強火にかけず、弱火から少しずつ上げていってください。




使



陶器に食べ物を入れたまま
長時間置くと、
染み・匂い・カビ等の原因となります。
ご注意ください。




使





水気を残すと
カビ・匂いのもとになります。(特に梅雨時!)
いつも、できるだけ熱いお湯で洗浄し、
よく乾かしてからしまう…これを習慣にしましょう。


匂いがついてしまった場合には、米ぬかに浸けて少し煮て
一晩おいておくと取れます。

特にビヤカップは事件発生多数…
とっても変な匂いがつきやすいのです。ご注意!
しっかり洗って乾かしてください。





40.水漏れを防ぐ作り方・焼成後の処置



陶器には磁器と違って小孔があるので、
長時間水を入れておくと水漏れすることがあります。

湯のみやカップならそんなに長時間水分を入れておかないし
使っていくうちに、目が詰まって漏れなくなっていくのでいいのですが…
花器などの場合は、少しの漏れでも困ります。


そこで、花器をつくる場合には、
まず、できるだけ漏れを防ぐような作り方をすることを心がけてください。

ポイントは
小孔をできるだけ小さくし、スキマを詰めるような作り方をすること。
それを基準に、粘土・釉薬のかけ方・焼成方法を選んでいきます。



陶器には磁器と違って小孔があるので、
長時間水を入れておくと水漏れすることがあります。

湯のみやカップならそんなに長時間水分を入れておかないし
使っていくうちに、目が詰まって漏れなくなっていくのでいいのですが…
花器などの場合は、少しの漏れでも困ります。


そこで、花器をつくる場合には、
まず、できるだけ漏れを防ぐような作り方をすることを心がけてください。

ポイントは
小孔をできるだけ小さくし、スキマを詰めるような作り方をすること。
それを基準に、粘土・釉薬のかけ方・焼成方法を選んでいきます。


粒度の細かいものほど○。
また同じ粒度の場合、白土よりも赤土・黒土の方がもれにくい。
内側は、必ず釉薬をかける。
できれば、内側・外側両方にしっかりかけるのが望ましい。
外側を無釉・吹きがけにしたい場合、内側はしっかり厚めに釉薬をかけておくこと。
酸化(OF)でも還元(RF)でもOK。
ただし、もれやすい粘土(古信楽土<細>・近江12号土・五斗蒔土など)を用いたり、
外側を無釉にする場合には、より焼き締まる還元(RF)の方が安心。



そして、上の通りに制作したにもかかわらず
焼きあがった花器から、水がやっぱりにじみ出てきてしまうようなら…

米のとぎ汁や片栗粉、または化学止水剤で水止め処置をしましょう。
ちょっとにじみでてくる程度なら、この方法で止まります。
また、少しのにじみなら使っているうちに自然ともれなくなります。






41.貫入の楽しみ


焼きあがった作品をよく見ると、釉薬の表面にひび割れがあります。
そのひび割れを、貫入といいます。

貫入は、陶器の特徴です。
貫入が特に目立つ釉薬を、貫入釉といいます。
クラアート21にあるものでは、ビードロ釉・志野釉・トルコ青釉など。
土灰釉も、特にRFで、濃いところに出やすくなります。



作品を使用していくと、貫入に自然と色が入っていき景色が変わっていくのを楽しめます。
もし好まなければ、漂白剤に浸けておけば少しとれます。

また、あえて意図的に、貫入に色を入れることもできます。

作品を、紅茶や、コーヒーなどに浸けておけば
黒い貫入模様に。
または、墨汁でもOK・・これは昔から使われている技法です。
赤い墨を使えば、ピンク色の貫入模様も得られます。





ただし、全体を浸けてしまうと釉薬がついていない底周りにも色がついてしまうので、浸け方にはご注意を・・。
それから、浸ける前に作品をよく乾かしておくこと。
また、処置前に手であまり触らないこと。
手の脂がつくと色が染み込みにくくなってしまいます。


貫入は、やきものが冷えて収縮する時に、粘土と釉薬の収縮率が違うために生じます。
貫入が入る時、「キン」と、高い小さな音がしますが窯出直後は、キン、キンと沢山の音がします。

そして、その音の出る間隔は少しずつ長くなっていき、
窯から出て30日程もたつ頃には、貫入がほとんど入りきります。

貫入が入るのみ終わりはありません・・!
実はずっと、貫入が入り続けます。
気づかないかもしれませんが、
お家にあるご自分の作品も、ごくたまに・・キン、と音を出すことがあるはずです?!






42.貫入の入る仕組みと種類



貫入についてのご質問を、教室内で頂きました。



Q: 貫入はどんな釉薬に入るのですか?

A: 実は陶器の場合、どんな釉薬でも生じます!
目に見えなくても、小さい貫入が必ず入っています。



Q: 貫入は、なぜ入るのですか?

A: 粘土と釉薬の、熱膨張・収縮率が、同じでない場合に起こります。
昇温時に膨張したり、冷却時に収縮する率が同じでないと、
より弱い釉薬の方に、亀裂が入るのです。
その率の差が大きいほど、粘土に合わせるための負担が大きいため、
より細かい貫入が入ります。



Q: 結晶のようなもようの貫入ができるのは偶然ですか?

A: 偶然ではなく、氷裂貫入とか亀甲貫入というものです。
実は、貫入には2種類あります。
素地土に対して、縦方向に入る貫入(クラアートの例でいえば、ビードロ釉)と、
素地土に対して、斜め・水平方向に入る貫入(厚がけのRF土灰)。

縦方向に亀裂が入るのは、釉薬の膨張率の方が大きいから。
斜め・水平方向に亀裂が入るのは、素地土の膨張率の方が大きいから。
釉薬自体はちぢみようがないので、その内部に圧力がかかって亀裂もようになります。










43.陶器の傷みも愛でる、日本の心



日本には、昔から
割れた器を丁寧に直して、新しい生命を吹きこみ、より一層その器を大切にする慣わしがあります。

割れた部分をうるしでつないだり、鉄の留め金で継いだり。
そして、その部分に新たに装飾を加えてその表情を楽しみました。


昔の人が、その割れ跡さえも美しさとして捉えたのは
そこにやきものらしいもろさと、そして割れてもなお損なわれない、生き生きとしたものを感じていたからでした。


長く使い続けるうちに増えていく傷も、やきものの一部として愛でる。

そういう美意識は、陶器の傷のみならず
長期間の使用により加わっていく色・表情にも向けられており、
例えば茶渋などの色が染み込んだ茶碗ほど愛され、
「萩の七化け」といった言葉もあるほどです。














44.割れた陶器の直し方



陶器は、磁器よりももろいので気をつけて扱ってあげる必要がありますが、
磁器を使いなれている私達はつい磁器のように扱って、
ふと落として割ってしまう事もやっぱりあります。


そんな時…、あきらめずに自分で直してみませんか?

接着剤で上手に直すポイントを紹介いたします。


・透明色に仕上がる
・硬化後、かちかちに固くなる
・5分前後から硬化し始める『急速硬化』タイプ
★硬化後に柔らかさのあるゴム質の接着剤は向きません。
★瞬間硬化タイプは△、長時間硬化タイプは×です。(作業時間の関係で)


・割れ面の汚れ(ホコリ・手脂)をとっておく
・まずかけらを合わせてみる
・かけらが多い場合には、合わせていく順番を確認しておく
★割れ面は粉気があるとつきにくいです。アルコールで拭くか、洗剤で洗うならその後よく乾かしてください。
★前もってかけらの向きや差しこみ方を確認しておけば、あとで慌てたり間違えてくっつけてしまう事がありません。
★かけらが多い時、合わせていく順番によっては後から入らないかけらが生じてしまうので注意!


・かけら1コずつ、つけていく
・接着剤は@たっぷりとつけてA余分をとり除く
・合わせた後は強く押さえながら硬化を待つ
・完全に乾くまで、かけらがずれない向きにしておく
★全てのかけらに接着剤を先につけてしまうと、途中で硬化し始めてしまうことがあるので、一つずつ接着していきましょう。
★割れ面は接着剤を少し吸い込むのでまずたっぷりとつけて、一呼吸おいたらようじの先などで余分をとり除きます。
★始めのうちは接着剤の反動でかけらがずれるのでしばらく手で押さえて、ある程度硬化したら、かけらが面の真上にのるような向きにして半日以上おきましょう。


・陶器の表面についたベトつきは早めに拭きとる
・はみでた接着剤はあとから彫刻刀などで削る
★ベタベタしたところは早いうちなら湿った布で拭きとれます。ただし割れ目に触れないよう、かけらが動かないよう、注意してください。乾いた後ならばカッターの先などでこすりとります。






45.陶器の欠け部分の直し方



ちょっとぶつけただけなのにふちが欠けてしまうことがあります。
これも、陶器独特のもろさからくるもの。

昔は、そこにうるしに砂や灰を混ぜたものを詰めて、直しました。
その方法は、今でも金継ぎ(金繕い)で使われています。



けれど、うるしを使うのは少し大変…
そこで、ホームセンターなどで簡単に手に入る、「穴埋め用パテ」を使った直し方を、紹介いたします。


ただし、注意していただきたいこと・・!
食器の内側や、縁部分にはこのパテを使わないでください。
うるしなら天然成分なので安全ですが、
穴埋めパテは化学製品なので、それはおすすめできません。

外側や、高台部分、花器などの欠けにのみ、この方法をご利用ください。




・固形タイプの一般的な接着剤
・陶芸材料ではないので、焼成する必要はない
★粘土状のA剤とB剤を練り合わせてから、3分以内にへこみや穴に埋めこみます。室温で短時間のうちに硬化します。
★金属材料や水まわりの穴埋めに、よく使われます。


・金繕いの「欠け埋め」の技法を手軽にできる
・食器の内側には使用しないこと
★本格的な金繕いでは、うるしと増粘剤(焼いた土を砕いて粉にしたもの)を練り合わせて欠け部分と同じものを作り、ぴったり合うようにヤスリをかけてから改めてうるしで接合します。
接着パテを用いれば、手軽でしかも早く硬化します。
★ただし、うるしのような天然成分ではないので、食べ物や唇が触れる部位にはおすすめしません。


@パテの色を選ぶ
AA剤B剤を同量で練り合わせる
B欠け部分に埋める
C余分な部分を削る
D着色などをして仕上げる
@ お店ではよく、一般の接着剤コーナーの端に白色・灰白色・黒色のパテが吊るされています。
金属用・屋外用・水中用どれでもOKです。
欠けた部位が目立たないような色や着色しやすい色を選びます。

A 必ず同量でよく練り合わせます。
手につくと取れにくいので、付属の手袋を使った方がいいでしょう。
固い時は手の平で少しあたためてください。

B 欠けた部分を少し多めの量で埋めます。
割れ面としっかり密着するように、指でうまくなじませてください。
なじませる時、指先を水でぬらしておくとパテがくっつきにくく、作業しやすくなります。
C 5分程待ち、ある程度硬化したところで余分な部分を彫刻刀やナイフで削って元の形に近づけます。
最後に研磨用の紙ヤスリで磨くととてもきれいに仕上がります。
D 完全硬化まで1時間程かかります。
硬化したら色えんぴつやマジック、などでうまく目立たないように仕上げましょう。
光沢がほしい時にはマニキュアやニスなどをぬります。






46.割れや欠けを金継ぎ風に仕上げる


陶器の傷を修復した後に、その上からうるしと金粉で装飾する。

日本で昔から行われている、金継ぎ(金繕い)の作業です。
これを、装飾のところだけ真似をする方法を紹介します。


本当は、割れ・欠けの修復もうるしでできれば本格的なのですが
それには時間と手間がかかります。
ちょっとやってみよう、というぐらいなら
修復は市販の接着剤や穴埋めパテの力を借りた方が無難です。


さてそこで、修復が終わったら・・
次の手順で、うるしと金粉を使って装飾をしていきましょう!



<準備するもの>
新うるし(黒め)・シンナー・筆・金粉・楊枝数本・新聞紙(敷くため)・タオル




手順@
金繕いをする部分をアルコールで一拭きするか、または食器用洗剤を用いて洗い、よく乾かす。

ホコリや手脂がついていると、うるしはうまくつきません。
手順A
割れ目のへこみにうるしを厚めに塗り、よく乾いてから彫刻刀で余分をそぎ取る。

割れ目のへこみにうるしが入り込むように塗ってください。
うるしがよく乾燥するまでに4日〜1週間程かかります。
この工程は次の本塗りの下準備です。
へこみが目立たなくなるまでこの工程をくり返してください。。
手順B
金粉で仕上げる部分にうるしを塗る。
確認用に、セロハンテープなどに同じようにうるしを塗っておく。

筆の伸びが悪い時にはうすめ液をごく少量加えると塗りやすくなります。
また、金粉を少量まぜて塗れば、後で蒔く金粉がやがてはげてきた時にそれが目立ちにくくなります。
汚くなるので、必要でないところにはうるしがつかないように気をつけましょう。
まちがえた場合はうすめ液で全体を拭き取り、乾いてからやり直します。
手順C
うるしが半乾きになったら、毛の多い筆の先に金粉をつけてうるしの上をなでる。

「ベトベトするけどうるしが指についてこない」のが最適なタイミングです。
セロハンテープに同時にうるしを塗っておき、触って。
手順D
Cの乾燥後、うすめたうるしを上から塗ってすぐ拭き取る。
…完成♪

蒔いた金粉を補強する工程です。
うるしはうすめ液を加えてべとつかない程度にして用います。拭き取りは毛のでない布(シャツ地など)で行なってください。





トウゲイのギモン目次へ